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放射能測定について(3)

前回は実際に放射能測定を開始する前の準備、エネルギーキャリブレーション(校正)からBG(バックグランド)データを取得、そして性能確認用試料5Bq/kgの測定と順をおって説明致しました。

過去の記事は放射能測定について(1)放射能測定について(2)をご参照下さい。

前回の記事でも書きましたが放射能測定はさまざまな不確定要素があり、その汚染が微量になればなる程に定量の難易度は上がります。
あくまでもこちらでの測定環境と言う前提ですが、3Bq/kg程度までなら温度、湿度、天候等にそれほど左右されずに測定が出来ます。
しかし、それは測定器が正しく校正されていると言う大前提があります。
メーカー出荷時にはCs-137とK-40の2点校正が行われています。
Cs-137のピークは662Kev(キロエレクトロンボルト)、K-40は1460Kev(キロエレクトロンボルト)とその差は常に798Kevになっていて初めて正しい測定値が得られます。
詳しくはCs-137とK-40の2点校正を参照下さい。

測定器を導入して設置場所が変われば、K-40のエネルギーキャリブレーションを行う必要があります。
そしてその設置場所でBGを取得して初めて測定が出来る環境が整います。

先にも書きましたが放射能測定をおこなう上で、さまざまな不確定要素があります。
検体はいつも同じものを測定する訳ではありませんので測定する検体によっても条件が違ってきます。
例えば、お米などはそのままの状態で検体袋に規定の量を入れ測定すればよいのですが、野菜などは細かく粉砕し出来るだけ一定の条件で測定する事も大切な要素です。
誤検出の主な原因の一つにK-40(カリウム)によるコンプトン散乱の影響があります。
このカリウム40は自然界に多く存在します。お米や野菜などにも濃度の差こそあれほとんどの検体に含まれます。
詳しいアルゴリズムは省きますが簡単に説明するとバックグランドから検体の面積を計算し、数値を算出しています。
まずは下のスペクトルをご欄下さい。
こちらは白米と玄米をまぜた約16Bq/kg程度の試料のスペクトルです。
K-40の1460Kevに注目して下さい。茶色が予め取得したBGで、赤色が検体です。
一番下の緑色がBGから検体を差し引いたものです。
この差がほとんどない事がおわかり頂けると思います。
余談ですがK-40は約9割がβ線、残りの1割程度しかγ線を出さない為に、2時間の測定ではCs-137に比べピークの高さが低い事もわかります。

16bq
*画像はクリックすると拡大します。

簡単に説明しますとCs-137の値は下の緑に塗りつぶしてある面積を計算します。
茶色のBGと赤色の検体の間にある面積(黒い部分)をわかりやすくする為に、塗りつぶしてみたのが下の画像です。

16bq-2
*画像はクリックすると拡大します。

この選ばれている領域がずれると真の値に近い値は出ません。
放射能測定の難しいところは測定器が示した数値が正しいかどうか、スペクトルを見て判断しなければならない事です。
その為にも頻繁に性能確認用セシウム(Cs-137、Cs-134)標準試料
でチェックする事は大変重要です。


それではこのK40が高い検体の場合はどうでしょうか。
下の画像はK-40を約100Bq/kg程度、人為的に添加したBGデータです。
K-40の1460Kev近辺のピークがよりハッキリ見えます。

K40BG100bq
*画像はクリックすると拡大します。

そして下の画像は同じくK-40が約1,000Bq/kgあるBGのデータです。
更に1460Kev近辺の山が更に高くなっている事がわかると思います。

K40BG1kbq
*画像はクリックすると拡大します。

そして更に下の画像に注目して欲しいのですが、こちらはぬかの測定を20時間おこなったスペクトルです。

K40-200bq
*画像はクリックすると拡大します。

茶色のBGに比べ、赤色の検体が全体的に持ち上がっている事がわかると思います。
K-40が約200Bq/kgとBGに対して高いので全体的に持ち上がっている事により、セシウムを計算する面積も多くなり、数値が押し上げられてしまい5.7Bq/kgの表記になっています。
Cs-137の662Kev辺りに注目して頂くとわかりますが際立ったピークはなく、全体的にギザギザになっています。
このような場合は誤検出を疑う必要があります。

回避する方法は下記に詳しく書いてありますのでご欄下さい。

K40のコンプトン散乱による誤検出の回避

上記の場合はセシウムはほぼ含まれていない、もしくは含まれていたとしても極微量であると判断出来ます。
もう一例紹介させて頂きますと、灰の測定例ですがK40が約2,000Bq/kgあり、しかもセシウムも含まれている例です。

K-40によるコンプトン散乱の影響(K-40/2,000Bq/kg)

このようにK-40が高い濃度で含まれている場合はコンプトン散乱の影響も考慮して、スペクトルを見て分析する必要があります。
しかし厄介な事に検体によりK-40の値はさまざまです。
正しい測定値を検証する為に、K-40の濃度が違う複数のBGをクロスチェック用に用意しています。

更に厄介な事に誤検出の要因はコンプトン散乱だけではありません。
元々、自然界に存在するさまざまな核種が正しい測定値の邪魔をする事が多々あります。
下記は一例ですがBi214などの核種もたびたび誤検出の要因になります。

正しい測定をおこなう為にはスペクトルを見て分析する事が重要です。


放射能測定について(1)でも書きましたが、測定目的別に測定器を選ぶ必要があります。

NaI(Tl)とGe(Li)の例で説明させて頂きましたが、その他の種類のLaBr、CeBr、SrI2などの検出器でも、もちろんCsI(Tl)もそうですが検出器単体のスペック(分解能など)でその測定器の性能が決まる訳ではありません。
心臓部分であるMCAなどさまざまな部品、ノイズ対策など総合的に性能を判断する必要があります。
ほとんどのメーカー公表の測定下限値は実測値ではなく、日本アイソトープ協会のCs-137標準線源を使用しています。
先に説明させて頂いたK-40は考慮に入れておらず、バックグランドが殆どない状態で検出下限値を計算しています。
この方式で計算すれば、ZIPも簡単に見積もっても、短時間で0.3Bq/kgの検出下限になりますが、実際の測定は机上の計算どうりにはいかない事を理解して下さい。


それぞれの測定器で適正な測定時間の検証を行う事が大切です。

数値の信憑性を確認するにはスペクトルを見なければ専門家でも判断出来ません。
言い換えればスペクトル表がないデータの数値はいかようにも改竄が出来ます。
3回に別けて記事にしましたが、測定者だけではなく、測定を依頼する方もスペクトルの基本的な見方を覚えて頂く事が、世の中に正しい測定を普及させていく事に少しでもお役に立てれば幸いです。


事故直後から測定を開始し、まだまだ勉強中の身ですが、放射能測定に関してもエキスパートの方々に教えて頂ける特別な環境をこれからも生かせていければと思います。

これから放射能測定に挑戦してみたいと言う方も是非お気軽にお問い合わせ下さい。

最後までお読み頂きありがとうございます。

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