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イオン交換樹脂吸着法による微量放射能測定の可能性について

福島第一原子力発電所事故により拡散したさまざまな放射性物質において比較的測定が容易なγ線を放出する放射性核種はセシウム(Cs-134及びCs-137)です。
Cs-134の半減期は約2年ですがCs-137の半減期は約30年と長く300年経っても完全には消えません。
福島第一原子力発電所事故はまだ収束しておらず、セシウムはこの数値なら安全と言う閾値はありません。
現状を考えますと現在、多くの市民測定所などで測定が行われている市民でも比較的測定が容易なセシウムの定量は出来るだけ長期にわたり、出来るだけ微量な汚染を知る事は大変意義がある事だと考えます。

しかし多くの市民測定所で現在使用されている放射能測定器の測定下限値はセシウム総量で液体で10Bq/kg程度の検体の定量もむずかしいのが現状です。
ライフラインである首都圏の水道水は少なからず福島第一原子力発電所事故由来のセシウムが現在でも含まれています。
しかし水道水は液体でセシウム総量で1Bq/kg以下の為、それを多くの市民測定所で検証し行政発表値と比較検討する事はほぼ不可能でした。


一部の市民測定所などで行われている水道水を濃縮させて測定する方法はその前処理に時間がかかりすぎ、濃縮時に液体を入れたガラスの容器などにセシウムが吸着されやすいのでその方法は断念しておりました。
もっと短時間でより前処理が簡単なより効率の良い濃縮方法を模索しておりました。

弊社は放射性物質を除去可能な0PPM-RO浄水システムの販売も行っており、セシウムやストロンチウム、ヨウ素、ウラン系なども除去出来る米国ダウ・ケミカル社のフィルムテックブランド99%除去タイプを標準仕様にしており、実際に販売も行ってまいりました。

しかし米国ダウ・ケミカル社の公表値である99%除去が正しいと仮定しても1%は除去出来てないと言う事を考えますと浄水システムとしては不十分だと思います。
更にその除去出来なかったであろう1%を除去する方法を模索しておりイオン交換樹脂の高い吸着性に着目し、従来のRO浄水器システムに米国製 Omunipure社のイオン交換樹脂(DI)フィルターを追加する事でより安全性と高めた浄水システムを考えました。
実際に取付けたところ首都圏の水は0ppmになる事を確認しております。
フィルターの交換時期の目安としてTDSメーターを活用し数値が上がってきたら交換の目安にする事が出来るためにRO浄水システムのユーザー様にはTDSメーターの活用を提案させて頂いております。
TDSメーターは放射性物質を測定出来る訳では当然ありませんが、一つの目安になると考えたからです。
そして各地のユーザー様からイオン交換樹脂フィルターの交換時に使い古したフィルターを回収し、中身のイオン交換樹脂を取り出しそのセシウム濃度を測定したものをまとめたのが下のページです。

各地の水道水のセシウム値参照


この測定結果から各地の水道水には福島第一原発事故由来のCs-134も含まれていると言う大切な情報も得られました。
しかしこの測定ではそれぞれ通水量が違いますので、1Lあたりの正確な濃度を知る事は出来ません。
そこでこの吸着率が高いイオン交換樹脂を利用して1Lあたりのベクレル値を定量する方法がないかの検討を行い試行錯誤しながらテストを繰り返しました。

当初のテストでは吸着率がわからず、試行錯誤しておりましたがTDSメーターを活用する事でより正確な前処理が可能である事が判明しました。
具体的にはここ葛飾区の水道水はおおむね113.1ppm(2015年10月初旬テスト時Av.)ですが、イオン交換樹脂を吸着させて0ppmになるまで撹拌させる事によりより正確性がある前処理が行う事が出来ます。


2015年10月4日の記事

そしていろいろ検索しているうちに日本分析化学会、慶応義塾大学薬学部薬学科の『イオン交換樹脂を用いる放射性セシウムの除去』の論文を発見しました。
こちらの記事の文中に詳しい記載があります。
要約しますとイオン交換樹脂でもさまざまな種類がありNa-樹脂のCs-137吸着率は水では99%、Cs-樹脂のCs-137吸着率はカリウムを加える事によって減少するがNa-樹脂の137Csの吸着(%)はほとんど不変であった。

この論文を見つけた事は大きな収穫でした。
実際に濃度がわかった液体の試料濃度を定量し、それをイオン交換樹脂に吸着させたものと数値を比較する事で実際の吸着率を検証しました。

吸着率96%とほぼ近い値を得る事が出来ました。


イオン交換樹脂吸着法による前処理は比較的不純物が少ない水道水(Av113.1ppm)につきましては約50リットルの水を吸着出来る事はテストにより確認しておりますが、不純物濃度が高い場合などは0ppmの純水で希釈するなどの工夫も必要でまだまだテストを続ける必要があります。
また、イオン交換樹脂のグレードなどにより吸着率、飽和率などの差がある可能性がある事から更なる検証が必要です。
また、検体自体の水道水のTDSメーター値も日々変動するので、吸着率、飽和率などをTDSメーターを活用して検証していく必要があります。
実際に10月初旬に測定を行った時点ではここ葛飾区の水道水のTDSメーター値は113.1ppmでしが、2015年10月19日時点で150ppmを超えています。
イオン交換樹脂の役割はイオンを吸着させる事ですが、イオン化しやすい物質以外のものが多く含まれている検体については実際に濃度がわかった液体の試料で検証する事も必要だと思います。
検体の温度により吸着率などが変化する可能性も考慮する必要があります。

Na-樹脂100%はCs-137のみを選択的に吸着はしますがTDSメーターでは0ppmにならない事など、最終的にはそれぞれのイオン交換樹脂をすべてテストするしか方法はありません。
記事にしてない意外なテスト結果などもあります。

更に数種類のイオン交換樹脂でテストを重ねており2015年10月25日の『スペクトル分析講習会』にてその結果を出来るだけ詳細にご報告出来ればと思っております。

液体中に含まれる微量のセシウム測定方法に今迄のテストをまとめています。


2015年10月25日の『スペクトル分析講習会』当日は、iFKR-ZIP-Proの実際のスペクトルも見て頂ける予定です。
また、FKRシリーズ全ラインナップ、mFKRiFKR-ZIP-AiFKR-254/iFKR-508も展示予定です。

是非、この機会に放射能測定器をご検討中の方はご参加頂けますようご検討をお願い致します。

電話でのお問い合わせもお気軽にお願い致します。


☎03-5629-6977

| 19:41 | 未分類
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