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正しい測定を行う為にはスペクトルを見て分析する事が大切です。

誤検出になりやすい測定例を参考までに説明させて頂きます。
今回の試料は『肥料』です。

土壌などの場合は高濃度に汚染されている事も多いので、検体が届きましたら簡易的にGM管測定器(LND7317)で測定を行います。

LN7317

約3分の測定で130cpm、0.37μSv/hです。
*LND7317はγ線とβ線を測定しています。

空間のバックグランドから考えても5倍程度の高い数値を示しました。
高いβ線がある事は間違いありませんがそれがセシウムなのか他の核種であるのかは現時点ではわかりません。
そこでiFKR-ZIP-Aで10時間の測定を行いました。

Hiryo302-10h

Cs-Allで91.2Bq/kgの値を示しました。
しかしセシウムのピークは明らかにずれている事、茶色のバックグランドから赤色の検体も全体的に持ち上がっているのもわかると思います。
K-40は1,000Bq/kg程度あるので、コンプトン散乱による数値を補正する為にK40が約800Bq/kg程度ある無汚染のBGと比較してみたのが下のスペクトルです。

Hiryo303-K40-800bqbg

まだ茶色のバックグランドに対して赤色の検体が全体的に持ち上がっていますので今度はK40が約1,000Bq/kg程度ある無汚染のBGと更に比較を行いましたのが下のスペクトルです。

Hiryo303K40Bg1kbq

今度はK40の部分はほとんど重なって見えます。
数値もCs-Allで約半分近い値になりましたのでK40のコンプトン散乱による数値のかさ上げは倍になっていた事がわかります。
更に細かくデータを見る為に検体のみスペクトルを下記に示します。

Hiryo303

エネルギーが低いほうから見ますとPb214の242、295、352Kev辺りとBi214の609、1120、1764Kev近辺にもピークが確認出来ますので自然由来の典型的はウラン系列である事がわかります。
Bi214の609Kevあたりにピークがあり、そのピークの肩の部分に位置するCs-137の662Kevあたりにもピークはまったく見えない事からセシウムはほぼ含まれてない、もしくは含まれていたとしても極微量であると判断出来ます。


測定器が示した数値を鵜呑みにしてそれをそのまま公表する事は誤った数値を公表する事にもなりかねませんので注意が必要です。
K40によるコンプトン散乱の影響や今回のケースのように Bi214など他の核種による影響なども考慮に入れスペクトルを見て分析する事が大切です。
スペクトルを見てROI領域がずれている場合の補正なども参考にして頂ければと存じます。

LND7317で測定した今回のβ線はセシウムやストロンチウムなど由来ではなく、K40のβ線が主である事も推測出来ます。

| 15:04 | 未分類