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微量放射能測定の可能性について

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新世代 環境(食品)放射能測定器 iFKR-ZIPが従来の測定器に対して新世代と言える性能の改善や新規に追加された機能について、実際の測定例等を含めて説明致します。

iFKR-ZIPはγ線の検出器として、CsI(TI) シンチレータを使用しています。、従来の測定器はNaI(Tl)シンチレータを使用していますが、温度特性、分解能、エネルギー直線性等、殆どの面で CsI(Tl)シンチレータの方が優れています。
最新のCsI(Tl)の採用により、検出部が3分の1もの軽量化と小型化も達成致しました。
iFKR-ZIPは、正確な核種分析が出来るGe(Li)検出器と、精度よりも検出効率が高く迅速な測定が可能なNaI(Tl)検出器の中間の性能を有していると考えます。

長時間測定によるCs-All/0.2Bq/kg定量例
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Ge(Li)検出器は分解能が優れていますが、面倒な液体窒素での冷却が必要なディメリットが有ります。その反面液体窒素で検出器の温度は変化せず検出下限は統計誤差が主に成るので長時間測定する事で1Bq/Kg以下まで可能な唯一の測定器でした。

NaI(Tl)検出器はスペクトル分析法で確定できる(ピークとして明確にCs-134,Cs-137等をを検出する事ができる。)検出下限は 25Bq/Kg程度です。
食品中の放射性セシウムスクリーニング法でもNaI(Tl)検出器の場合は25Bq/Kgと規定しています。NaI(Tl)検出 器は温度特性が悪く、光電子増倍管の高圧電源の変動にも大きく影響される。磁気にも敏感に反応する。
検出下限は統計誤差よりもこれらの誤差が主に成るので 長時間測定しても検出下限を下げる事は困難です。

iFKR-ZIPは、分解能はGe(Li)検出器より悪いが、検出効率の面ではCsI(Tl)検出器の方が良いので同じ検出下限であれば測定時間は同じ位 になります。
CsI(Tl)検出器は温度特性は良好でエアコン無しでも測定可能です。分解能以外はGe(Li)検出器と同様に検出下限は統計誤差が主に成 りますので長時間測定する事で1Bq/Kgも10時間測定でピークが検出できます。

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上の分析結果は、iFKR-ZIPで、玄米(Cs合計10Bq/Kg)320g(160g x 2)を10時間測定した時の分析結果です。Cs-134の3.1Bq/Kgのピークも確実にピークとして検出しています。

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上のスペクトルは、玄米を2Kchで10時間測定測定後、スムージング処理、さらに2Kchを1Kchに圧縮した物です。このままでは、赤いカーソルの部分がCs-137,4のピークですがバックグラウンド(以下BGと略)に埋もれて判別は困難です

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上のスペクトルは、分析する試料の測定時間よりも、長い時間測定したBGスペクトルを試料の測定時間に合わせてノーマライズしたBGスペクトル(下図の茶色)重ね合わせて表示したものです。
LOG表示の場合。

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上のスペクトルは、測定試料のスペクトル(赤色)からBGスペクトル(茶色)を差し引いて正味(ネット)の測定試料のスペクトル(緑色)とカウントの表示 を解り易いリニア表示にしました。
このスペクトルで注目して頂きたいのは、一般的なNaI(Tl)検出器のスペクトルと大きく異なるのは、BGスペクトル と試料スペクトルがCs-134の500KeVまで殆ど差が無く重なっています。
3インチのNaI(Tl)でマリネリ容器を使用した場合、500KeVの 辺りでBGの2倍近くもK-40 等の影響でBGレベルを押し上げてしまいます。

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検出器の効率は、検出器のサイズが大きく、試料の量が多い方が良くなりますがBGの方も検出器のサイズ、試料の量と共に増加してBGを押し上げ検出下限が悪 くなります。鉛の遮蔽体も重くなります。iFKR-ZIPの独特な試料室の形状や2インチx2インチx1インチの扁平な検出器は、最大の検出効率で最小の BGを得るためにシュミレーションを繰り返した結果です。鉛4cm厚で総重量50Kgです。
従来のNaI(Tl)検出器を使用した場合は、遮蔽体の総重量 は150Kg程度が必要になります。
数ベクレルの放射能測定に必要な条件について
検出下限が数ベクレル以下に成りますと、統計誤差よりもMCAの性能が誤差の主に成る事も有ります。特にADCの微分非直線性が重要に成ります。
Ge(Li)検出器に使用できるMCAと同等の性能がMCAにも必要条件になります。パルサーで1chに収まる真の微分非直線性が無ければ数ベクレル以下 は測定できない事が、実際に1Bq/Kgレベルの測定を行うと解りますが、ハッキリとMCAの微分非直線性の性能の差が出てきます。
統計誤差や微分非直線性が難解な統計学の数式や、MCAメーカーでさえ正しく理解していないほど難解な微分非直線性を解り易く視覚的なスペクトル例で説明いたします。上のBGスペクトルは、試料室のフタを開けたまま測定したものです。

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上のスペクトルの縦軸はLOG表示で微分非直線性が悪い例です。
統計誤差を端的に表示しています。
高エネルギー側のカウントの少ない所ではスペクトルの幅が広く(0~10カウントの間で激しく上下に変動しています。)
低エネルギー側では200KeV近辺で500カウント程度ですが、スペクトルの幅が狭く線で描いた様になっています。統計的な誤差(カウントの変動)はエ ネルギーには関係なくスペクトルの線幅(カウントの変動)で表現できます。
数ベクレルの測定には長時間測定しないといけないと言うよりは単位時間当たりの カウント(cpm、cps等)が少なくポッン、ポッンとしか検出されないので目標とする積算値まで到達するのに長時間かかると考えた方が妥当かもしれませ ん。検出下限などもピークが有ると解る為にはスペクトルの線幅の3倍は盛り上がった時、線の上にポツンと頭を出すので検出できると表現できます。
統計誤差は、スペクトルから何となくイメージ出来た事と思います。
数ベクレルの測定には、カウントを貯めて目標の線幅を超えるまで長時間測定が必要なだけでなく、当然その測定時間中にピークの位置がズレル(ドリフト)事が有っては成らない事も、容易に想像出来ると思います。


統計誤差のスペクトルと比較して下さい。このスペクトルではカウント数が多く成っても、ある時点からスペクトルの幅が太いままになっています。数ベクレルの 測定には使用できません。微分非直線性とはMCA固有の誤差で検出下限が統計誤差(測定時間を長くしても)よりも大きい場合にはMCA固有の微分非直線性 で検出下限が頭打ちに成ってしまいます。
微分非直線性が理解しにくく、見落とすのは、統計誤差の測定で使用したMCAとこの微分非直線性の悪いMCAでCs-137の分解能を測定した場合スペク トルの形も分解能も殆ど見分けがつきません。さらにデータースムースを掛けたり、少ないch数のMCA(512ch)の場合は見かけ上線幅が狭くなりま す。

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上のスペクトルは、データースムースを掛けたスペクトルです。見事に微分非直線性が改善された様に見えます。問題は微分非直線性の誤差に埋もれたピークは、全て消えてしまいます。


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