本日 1 人 - 昨日 497 人 - 累計 1583329 人
  • 記事検索

  • 更新メール通知
  • このブログの更新通知をメールで受け取ることができます。
RSS

誤検出を回避する為に必要な事

ここでは出来るだけ簡単にわかりやすく説明する為にセシウム(Cs-137、Cs-134)の定量に特化したスペクトル分析の基本について説明致します。

測定結果は出た数値を鵜呑みにせずにそのスペクトルをみて判断する事が基本です。
測定器で出た数値を分析せずにそのまま公表している例を多くみかけます。

NaI(Tl)などは食品中のセシウムスクリーニング法で検出下限値が25Bq/kgと規定されています。
検出下限値、数ベクレルでNDなど誤解を招くような表示には注意が必要です。
国がNaI(Tl)などを検出下限値25Bq/kgと定めているには理由があります。
NaI(Tl)検出器は温度特性が悪く、光電子増倍管の高圧電流の変動にも大きく影響され磁気にも反応します。
検出下限は統計誤差よりもこれらの誤差が主にあるので、長時間測定しても検出下限値を下げる事は困難だからです。
理論上は検出下限値を半分にするにはその4倍の測定時間が必要ですが机上の計算どうりにいきません。
つまりどんなにスキルのある人が測定しても測定器自体の限界があるのです。
当然ながらスペクトルで判断出来て初めてスペクトル分析と言えます。
NaI(Tl)の場合、経験豊富なスキルがある人でも定量出来る下限値は10Bq/kg程度が限界ではないかと思います。
数ベクレルの判断はNaI(Tl)ではまず不可能です。
ゲルマとクロスチェックしてもその意味は同じです。


iFKR-ZIP-Aで実際の測定で微妙な判断の例を具体的に説明したいと思います。

下のスペクトルは秋田県産の玄米の約10時間測定したものです。

gen10h1222.jpg
*ログ表示、BG32時間

数値的にはCs-Allで1.4Bq/kgになっていますがCs-137の662Kevあたりにピークはありません。
そしてCs-137とCs-134の同位体比も極端に違います。
このような場合は誤検出を疑う必要があります。
玄米の場合はK40なども多く含まれBiなどの天然由来の核種も含まれていますのでその影響を打ち消す必要があります。
そこで福島第一原子力発電所事故前の富山県産玄米のBGを20時間取り直し、そのBGと比較したのが下のスペクトル表です。

画像
*赤、茶はログ表示、緑はリニア表示、BG20時間

茶色はバックグランドで赤が検体、緑は茶色のBGを差し引いた正味(Net)の値です。
Cs-Allで数値は0になりました。

出てきた数値を鵜呑みにしてしまうと1Bq/kg定量下限値未満なものでも1.4Bq/kgと間違った数値を公表してしまう事になります。
仮に自主的に出荷基準を1Bq/kgとした農家の依頼で測定をした場合、取り返しのつかない迷惑をかける事になります。
逆に10Bq/kg以下の数値の信憑性がない測定器で数ベクレルNDなどの表記をしてしまう事は大変な問題だと思うのです。
10Bq/kg以下の数値の信憑性がないと言う事はそのNDで表示された値はもしかしたら8Bq/kgあるかもしれないからです。


だから数値の公表に際しては細心の注意を払う事は大変重要です。
更に数値が一人歩きしない為にもスペクトル表の添付は大変重要だと考えます。
ゲルマも例外ではありせん。
スペクトル表がない数値はその検体をどのくらいの時間測定したのかもわからず、なんのデータもなくただ数値だけを公表しても見る側としたらそれを信じるしかないのです。
スペクトル表があれば専門家がみればその信憑性を公正に判断する材料になるからです。
行政のデータも当然、市民でその信憑性を確認する為にもスペクトル表を付ける事は大変重要です。
約30年の半減期のCs-137は100年経っても完全にはなくなりません。
測定を依頼する方も出来ればスペクトル表の基本的な見方を覚えて頂き出来るだけ正確な数値を皆で検証出来るようになる事が理想だと思います。


測定Q&Aも是非、ご参照下さい。

| 14:09 | 未分類